ありふれた退勤時間、ソウルの地下鉄3号線の中で全てが始まる。平凡な契約社員であるキム・ドクシャは、10年もの間、誰も読まなくなった長編ウェブ小説『滅亡した世界で生き残る3つの方法』(以下、滅生法)をただ一人読み続けてきた唯一の読者だ。全3,149話に及ぶ物語が完結し、作者から感謝のメールを受け取ったその瞬間、小説の中の残酷な世界が現実のソウルを侵食し始める。虚空を裂いて現れたトッケビ(鬼)の「ビヒョン」は、パニックに陥る市民たちに命を懸けた「シナリオ」の開始を告げ、見慣れた漢江や光化門は瞬く間にモンスターが跋扈する修羅場へと変貌する。混沌の中、ドクシャは悟る。この世界の結末を知っているのは、自分一人だけだという事実を。 本作は、世界的な人気を誇るウェブトゥーンの壮大な世界観を圧倒的なスケールで映像化したSFファンタジー超大作だ。主人公キム・ドクシャ(アン・ヒョソプ演)は、小説の知識を唯一の武器とし、滅亡した世界の「攻略本」を手にした状態で生存を図る。彼は小説の本来の主人公であり、死に戻りを繰り返すことで感情を失ってしまった「回帰者」ユ・ジュンヒョク(イ・ミンホ演)と出会い、彼を利用し、時には協力しながら奇妙な共闘関係を築いていく。さらに、ユ・サンア(チェ・スビン演)、イ・ジヘ(ジス演)、チョン・ヒウォン(ナナ演)、イ・ヒョンソン(シン・スンホ演)といった個性豊かな仲間たちが加わり、単なる生存競争を超えた、システムへの抵抗という巨大な叙事詩を描き出す。 この映画の最大の魅力は、「見る者」と「見られる者」の境界を曖昧にするメタフィクション的な設定にある。夜空から人間たちの殺し合いを娯楽として見下ろす超越的な存在「星座」たちは、現代のストリーミング文化を痛烈に風刺しており、彼らの支援(コイン)なしでは生き残れない人間模様は、資本主義社会の縮図とも言える。ドクシャは予言的な知識を駆使して悲劇的なシナリオをねじ曲げ、絶望に囚われたユ・ジュンヒョクに新たな希望を提示し、「救い」という重厚なテーマを投げかける。特に、地下鉄駅構内での緊迫した攻防や、巨大な怪物との戦闘シーンは、韓国映画のVFX技術の最高峰を証明している。 キム・ビョンウ監督は、廃墟と化したソウルのランドマークをリアルに描写し、観客に既視感と恐怖を同時に与える。崩れ落ちた橋や植物に覆われた高層ビル群はディストピア的な美しさを湛え、アン・ヒョソプの繊細な知略家の演技と、イ・ミンホの圧倒的なカリスマ性が完璧な調和を見せている。Netflixでの公開直後からグローバルランキングを席巻した本作は、原作ファンにはテキストが映像として具現化する感動を、映画ファンには予測不可能なスリルを提供する。 『全知的な読者の視点から』は、単なるアクション映画ではなく、物語を愛するすべての人へ捧げる賛歌である。映画を観終わった後、毎日利用する地下鉄のスクリーンドアや漢江の夜景が、これまでとは違って見えることだろう。あなたが立っているその場所こそがシナリオの舞台になるかもしれないという想像力、そしてソウルという都市が秘めたダイナミックなエネルギーを感じたいなら、この映画は間違いなく最高の選択となるはずだ。
Netflixが贈る野心的な韓国オリジナルSFパニック・ブロックバスター『大洪水』は、南極の氷河崩壊によって地球全体が水没するという、人類最後の日を背景に描かれる壮大なサバイバル・ドラマです。本作は単なるディザスター・ムービーの枠を超え、極限状況下における人間の生存本能と道徳的ジレンマを深く掘り下げています。300億ウォン(約30億円)規模の巨額な製作費が投じられ、圧倒的なスケールとリアリティで描かれる「終わりの日」は、観る者に息苦しいほどの緊張感と没入感を与えます。 物語の中心となるのは、徐々に水に浸食されていく高層マンションという閉鎖空間です。AI研究員であるアンナ(キム・ダミ)は、迫りくる大洪水の中で幼い息子を守るため、必死の脱出を試みます。水嵩が増すごとに生存可能な空間は狭まり、マンションは安息の地から巨大な密室へと変貌します。そこに現れるのが、保安チームの要員ヒジョ(パク・ヘス)です。彼はアンナたちを救助するために派遣された人物ですが、単なる救助者とは思えない謎めいた雰囲気を漂わせており、物語に予測不能なサスペンスをもたらします。 アンナは単なる被害者ではありません。彼女は人類再建の鍵を握る重要な頭脳であり、冷徹な判断が求められるAI研究と、息子を想う熱い母性という相反する価値観の間で葛藤します。この設定は、AIと人間の感情、個人の生存と種の保存という哲学的な問いを観客に投げかけます。キム・ダミの繊細かつ力強い演技と、パク・ヘスの重厚な存在感がぶつかり合い、極限状態における人間ドラマをより一層盛り上げます。 監督を務めるのは、『テロ,ライブ』や『PMC:ザ・バンカー』など、限定された空間でのスリラー演出に定評のあるキム・ビョンウです。彼は本作でもその手腕を遺憾なく発揮し、水没していくマンションという特殊な状況を最大限に活かした演出を見せています。2022年から約半年間にわたり撮影された本作は、最新のVFX技術を駆使して水の恐怖と美しさを表現しており、韓国SF映画の新たな到達点として期待されています。 『大洪水』は、アクションの爽快感と重厚なドラマが見事に融合した作品です。気候変動という現代的な不安をテーマにしつつ、極限状態でも失われない人間性を描くことで、世界中の視聴者の心を掴むことでしょう。迫力ある映像美と緻密なストーリーテリングが織りなすこの傑作は、観る者をかつてないサバイバルの旅へと誘います。